
「いつ法人化すべきか」は最大の論点
第1回で法人化のメリット・デメリットを整理しました。
第2回は「いつ法人化すべきか」というオーナー共通のお悩みに、具体的な数字と判断基準でお答えします。
判断軸は大きく3つに絞ります。
― ①税率の損益分岐点、②物件規模、③将来計画です。
判断軸①:税率の損益分岐点

法人化を検討する最大の動機は「所得税率と法人税率の差」です。
所得税は累進課税のため所得が増えるほど税率が上がりますが、法人税は実効税率がおおむね一定です。
個人の所得税・住民税の税率イメージ
| 課税所得 | 所得税+住民税の合計税率(概算) |
|---|---|
| 〜195万円 | 15% |
| 〜330万円 | 20% |
| 〜695万円 | 30% |
| 〜900万円 | 33% |
| 〜1,800万円 | 43% |
| 〜4,000万円 | 50% |
| 4,000万円超 |
55% |
法人税の実効税率(目安)
| 所得金額 | 実効税率 |
|---|---|
| 800万円以下 | 約23% |
| 800万円超 | 約34% |
※法人税率そのものではなく、法人住民税・法人事業税等を含めた実効税率の概算です。所在地、資本金、所得金額、税制改正等により実際の税率は異なります。
個人の課税所得が概ね900万円を超えるあたりから、所得税・住民税の負担感が大きくなり、法人化による税率差のメリットを検討しやすい水準になります。(国税庁ホームページ参照)
ただし、法人設立費用、均等割、社会保険、税理士報酬、不動産の移転コストなども含めて総合的に判断する必要があります。
判断軸②:物件規模(事業的規模)
もう一つの重要な目安が「事業的規模」です。
実務上は、個人としてはおおむね5棟10室基準が一つの目安とされますが、最終的には貸付の規模、収入状況、管理実態などを踏まえて判断されます。
事業的規模に該当し、正規の簿記による記帳や電子申告等の要件を満たす場合には、青色申告特別控除65万円の適用を受けられる可能性があります。
事業的規模に達した段階で、法人化を視野に入れる方が多くなります。理由は以下のとおりです。
- 家賃収入が安定的に大きく、法人税率の有利性が明確化する
- 規模拡大に伴い経費構造が複雑化し、法人会計のほうが管理しやすい
- 金融機関からも、法人格を持つことが融資面で評価されやすくなる
福岡では、博多区・中央区・東区などの収益物件の多いエリアでアパート・マンションを複数棟所有されるオーナーが、ちょうどこの水準で法人化を検討されるケースが見られます。
判断軸③:将来計画 ― 拡大か承継か

所得水準・物件規模が法人化の入口だとすれば、出口を決めるのは「将来計画」です。
1. さらに物件を増やしていくフェーズ
個人で投資を続けると、所得税率が累進で上昇し、税負担が重くのしかかります。
早めに法人化することで、増えた収益を税率が低い法人内に留保でき、再投資の原資にしやすくなります。
2. 相続・事業承継を見据えるフェーズ
個人所有の不動産は、将来の相続税評価額にそのまま反映されます。
法人化して株式評価に切り替えることで、評価引下げや贈与による段階的承継が可能になります。配偶者・子を役員にしておけば、所得分散と承継準備を同時に進められます。
3. 安定運用フェーズ
新規購入予定がなく、所得もあまり大きくない場合は、無理に法人化するメリットは小さくなります。
設立コストと均等割の負担が、節税効果を上回ることもあるためです。
福岡の不動産市況と法人化判断
福岡市は人口流入が続き、賃貸需要が安定しているエリアです。
中央区天神・博多駅周辺の商業地、ワンルーム需要が高い中央区・博多区・南区、ファミリー需要のある西区・早良区、東区など、エリアごとに利回り構造が異なります。
法人化判断にあたっては、現在の収支だけでなく、今後3〜5年でどのエリアにどれだけ投資するかという計画も含めて検討する必要があります。
例えば「今後2年で1棟追加購入予定」というオーナーであれば、購入前に法人を設立し、新規物件を法人名義で取得するほうが、後で個人から法人に名義移転するよりコストを抑えられます。
第2回まとめ ― 判断基準のセルフチェック
以下のいずれかに当てはまる方は、法人化のメリットが大きい可能性があります。
- 給与+不動産所得の合計課税所得が 900万円 を超える
- 5棟10室基準を満たしている、または近い将来満たす予定
- 家族(配偶者・子)に所得を分散したい
- 今後数年以内に物件を追加取得する計画がある
- 相続・贈与を見据えた資産承継を考えている
次回は「不動産法人の種類と選び方」 ― 株式会社・合同会社、所有型・管理型を比較しながら最適なスキーム選択を解説します。
不動産法人化は、所得税・法人税の比較だけでなく、登録免許税・不動産取得税・消費税・融資・相続対策・社会保険などを含めて検討する必要があります。
個別の状況により有利不利が大きく変わるため、実行前に専門家へ相談することをおすすめします。
福岡で不動産法人の設立をご検討の方へ
「自分のケースは法人化すべき水準か?」迷われている方は、まずは当相談室までご相談ください。
所得状況・物件構成・今後の投資計画を踏まえ、法人化の適否やタイミングについてアドバイスいたします。
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