不動産法人は「2つの選択」で決まる

第3回は法人形態とスキームの選び方を解説します。
不動産法人の設計は、大きく分けて2つの選択で決まります。1つは「会社の種類」(株式会社か合同会社か)、もう1つは「不動産の保有スキーム」(管理委託型・サブリース型・所有型)です。
それぞれの特徴を理解した上で組み合わせることが、法人化成功の鍵になります。
選択1:株式会社 vs 合同会社
| 項目 | 株式会社 | 合同会社 |
|---|---|---|
| 設立実費 | 約18万〜25万円程度 ※電子定款・資本金・定款認証手数料により変動 | 約6万〜10万円程度 ※電子定款の場合は印紙代不要 |
| 定款認証 | 必要(公証役場) | 不要 |
| 役員任期 | 原則2年(最長10年) | 任期なし |
| 決算公告 | 義務あり | 不要 |
| 信用力(対外的) | 高い | 近年向上中 |
| 意思決定 | 株主総会・取締役会 | 社員の合意でシンプル |
| 税制上の扱い | 同じ | 同じ |
税制上、株式会社と合同会社に違いはありません。
家族のみで運営し、対外的な信用力よりコスト・運営の簡便さを重視するなら合同会社が合理的です。
一方、将来的に従業員を雇い対外的に拡大する、あるいはオーナー単独で「会社らしさ」「信用力」を重視したい場合は株式会社が無難です。
福岡で多いケース
家族中心の資産管理目的なら合同会社、複数物件を持ち融資交渉を重視するなら株式会社、というのが当事務所での一般的な提案です。
ただし、合同会社であっても、金融機関から融資を受けて物件取得を進めているオーナーは実際にいらっしゃるため、必ずしも株式会社一択ではありません。
選択2:不動産保有の3スキーム

① 管理委託方式

物件は引き続き個人で所有し、管理業務(賃料集金、入居者対応、修繕手配など)だけを法人に委託する方式です。
法人は管理料を個人から受け取り、それを売上として法人決算します。
- メリット:物件の名義変更コストが不要。最も導入しやすい。
- デメリット:法人に移せる利益が小さい(管理料は家賃の5〜10%が相場)。節税効果は限定的。
- 適するケース:小〜中規模で、まず法人運営を試したいオーナー。
② サブリース(転貸借)方式

個人所有の建物を法人が一括借上げし、入居者に転貸する方式です。このスキームを、特にサブリース方式と呼んだりします。
法人は借上げ家賃と転貸家賃の差額を収益とします。
- メリット:管理委託より法人に移せる利益が大きい(家賃の10〜20%程度)。物件の名義変更も不要。
- デメリット:賃貸借契約の整備が必要。空室リスクは法人が負う構造になる。
- 適するケース:管理委託では節税効果が物足りないが、所有方式までの大手術はしたくないオーナー。
③ 所有方式(法人所有)

物件そのものを法人名義に移転する、または新規物件を法人名義で取得する方式です。家賃収入のすべてが法人帰属となります。
- メリット:所得分散や将来の相続・承継対策につながりやすく、スキームによっては大きな効果が期待できます。
- デメリット:既存物件を移す場合、登録免許税・不動産取得税・譲渡所得税などのコストが発生。融資の組替えも必要。
- 適するケース:今後物件を新規取得するオーナー、相続税対策を強く意識するオーナー。
スキームの選び方 ― 判断フロー
シンプルに整理すると、次のように選択していきます。
- 今後物件を新規取得する → 所有方式(新規分のみ法人で取得)
- 既存物件はそのまま、節税を段階的に進めたい → 管理委託 or サブリース
- 相続税対策を本格化させたい → 所有方式も選択肢。ただし移転コスト・税負担との比較検討が必要
- 築古で評価が低い物件 → 所有方式を検討しやすい場合がある
- 築浅・収益性が高い物件 → 移転コストとの比較が必須
多くのオーナーはまず管理委託やサブリースで法人を立ち上げ、新規取得分から所有方式に切り替えていく「段階的法人化」を採用されます。
「家族構成」も忘れずに
不動産法人は、節税だけでなく相続・承継の器でもあります。
配偶者や子を最初から役員・出資者に入れておくと、後の所得分散・株式贈与がスムーズです。
逆に、最初オーナー単独で設立し、後から家族へ株を移そうとすると、株式評価額が膨らんでしまっているケースがあります。
設立段階で家族構成を意識した出資設計を行うことは、税務上きわめて重要です。
第3回まとめ
不動産法人は「会社の種類(株式会社/合同会社)」と「保有スキーム(管理委託/サブリース/所有)」の組み合わせで決まります。
重要なのは、現状と将来計画を整理した上で、最も合理的な組み合わせを選ぶこと。
十分な検討をせずにスキームを選ぶと、節税効果よりも移転コストや運営負担が大きくなる場合があります。
次回は、いよいよ実務編。「福岡での不動産法人設立 ― 具体的な手順・必要書類・費用」を解説します。
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